《特別寄稿》「透明人間」のような外国人児童生徒=愛知県在住  林 隆春 ブラジル日報WEB版より

 滋賀県東近江市に日系ブラジル人を中心に1歳から高校3年生までの190名余りが通う準学校法人「日本ラチーノ学院」があります。緑に囲まれた山村の自然あふれるその地で、小学校を改修して利用されています。
 僻地にあるため当然自力で通うことも出来ず、バス5台、ハイエース12台で校長先生や他の先生方が運転し、生徒は通学しています。
 2000年に創業したラチーノ学院、校長のカミ ムラ・カイオ氏(53歳)は、「求められるうちは続けたい。しかし、どれだけ持つのか」と寂しそうにつぶやきます。
 学費収入の内訳は、
【5歳まで】4万円(通学と食事代のみ)、うち行政からの補助3万円で、残りは自己負担1万円。
【小学生】4万8800円、補助なし、全額自己負担。
【中学生】4万8800円、補助なし、全額自己負担。
【高校生】4万8800円、うち行政からの補助1万円、自己負担3万8800円。
 日本人なら当然義務教育は無償ですよね。
 しかし同じ町内であっても日本人は無償、外国人であるブラジル人は義務教育ではなく5万円近くのお金を支払わざるを得ません。
 日本ラチーノ学院の教員は18名、うち日本人は3名。有能かどうか私には分かりませんが、みなさん子どもに対する使命感、思いにあふれた方たちです(給与は安いのに)。

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ラチーノ学院の校舎全景(同校サイトより)

 高校3年で来月卒業するクラスの15名に質問しましたが、ブラジルに帰国する人は3名、日本の専門学校に進学する人は4名、残り8名は決めていない(何も考えていない)と言います。進路指導がないのです。
 滋賀県から運営補助金は出ていますが、校舎が古いのでメンテナンス費用にそのほとんどが消えていき、決定的に資金不足です。
 ブラジルへの帰国を希望する子どもたちだけではなく、日本の学校でいじめに遭った不登校の子どもたち、軽度の発達障害のある子どもたちなど、日本の学校に適応できないなど多くの子どもたちの止まり木、居場所となっていて、地域のブラジル人にとってなくてはならない存在となっています。
 ですが、日本人社会には見えない「透明人間」となっています。
 カイオ氏も「私たちは可哀想な存在ではない。教育を始め様々な権利のないことが寂しい。社会に出てもほとんどが非正規、派遣労働に就かざるを得ない。日本人のみなさんも一緒に考えてほしいだけ」と言います。
 実に切実な叫びではありませんか。
★ラチーノ学院サイト(https://latinogakuin.com/about/