アメリカ便り「またテキサスの小学校で銃乱射事件、犠牲者21名」 富田さんからのお便りです。


 和田さん&W50年の皆さん、お元気ですか?テキサスではまた銃乱射事件が起き、19人の小学校学童が殺害されました。事件のあったユバルディは、私が年に数か月過ごす、サン・アントニオの西方130㌔にある町なので他人事とは思えません。今回のアメリカ便りは「またテキサスの小学校で銃乱射事件、犠牲者21名」と題して、事件とその背景、銃規制の問題点をレポートしました。「病めるアメリカ」の現状をお読みいただければ幸いです。下記のブログをお
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富田眞三  Shinzo Tomita

アメリカ便り青グラデーション


 またテキサスの小学校で銃乱射事件、犠牲者21名

 

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                        写真:Https://www.gmanetwork.com)

去る5月24日、テキサス州南部のユバルディ市ロブ小学校で乱射事件が発生して、学童19名と先生2名が殺害された。ユバルディ市はサン・アントニオ市の西方130㌔、南のメキシコ国境から87㌔の地点にある、人口15,000の小さな町で住人の80%がラテン系である。

 ユバルディ事件は、学校で発生した銃乱射事件としては、2012年のコネティカット州サンディ・フック小学校で28名の犠牲者が出た以来の大事件だった。

19名の学童犠牲者のほかに、数人が負傷している。

 犯人は18歳の同市の青年

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写真:(www.usnews.com)

警察の発表によると銃撃犯はサルヴァドール・ラモスという18歳のファースト・フッドの店員で、この日の朝、自宅で祖母の顔面に向けて銃を発射して、大怪我をさせた後、ピックアップ・トラックを運転してロブ小学校に乗り付け、学校の防壁を突破して校内に侵入していた。なお、彼が使用した2丁のコルト社製のAR-15ライフルは、事件前に18歳の誕生日を待って、合法的に購入したものだった。米国の18歳は飲酒は禁止だが、銃器は買えるのだ。

 さて、孫に撃たれて重傷を負った彼の祖母は気丈にも警察に発砲事件を通報した後、救急車で病院に運ばれたが、命に別状はないという。

 テキサス州公安局長のスティーブ・マックローは事件の概要を次のように述べた。「現場の少学校に到着した警官隊は、銃撃が始まるまで学童たちが閉じ込められていた、複数の連結された教室の外で1時間以上待機していた」。

 犯人のラモスは学校に着いてから、1時間も教室に立てこもっていたが、その間19名の警官たちは教室前の廊下でただ見守るだけだった。

教室内からは数人の人たち(多分先生たち)から911番(日本の110番)にライフルを持った男による発砲を危惧しての通報があったが、警官たちは恐らく「侵入者」は立てこもっているだけで、「子供たちは危険にさらされていない」と信じて、何の対策も講じなかった。

 78分が経過したころ、ラモスは突如行動に移り、学童に向けて発砲し始めた。ようやく、事の重大さに気が付いた警官たちは、あわてて教室に突入して行った。

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  写真:(https://www.yahoo.money.com)

テキサス州公安部は、「今となっては後知恵だが、あの判断は誤りだった、と認めた。

公安局の発表によると、午後1時ごろ、米墨国境警備隊の戦術ユニットが校舎に突入して犯人を射殺した。犠牲者の親たちは、「なぜ警官隊は教室内に突入するのに78分も待ったのか」と疑問を呈した。

数日後、連邦司法省の係官はユバルディ市長の要請を受けて、この事件のユバルディ警察の対応の調査を始める、と答えた。

 一方、テキサス州警察は、犯人ラモスは明白な犯行動機もなく、犯行を予想させるような不審な挙動もなかった、としている。彼は精神障害も犯罪歴もなかったため、2丁の銃器が買えたのだ。ただし彼は吃音のため人嫌いで友人もなかった。

ところが、乱射事件から1週間後、ラモスの父母、祖母にはそろって犯罪歴、逮捕歴があることが判明した。しかも父母は複数回の犯罪歴の持ち主のため「万引き家族」ならぬ犯罪家族なのだが、銃器購入の際の身元確認調査は、家族の身元までは要請されない。しかし、何か釈然としないですね。

事件当日の朝、ラモスはFacebookに3回「学校を襲撃する」と予告めいたメッセージを送っていたが、校名は書かれていなかった。

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                       写真:(https://www.thetexastribune.com)

 ユバルディ乱射事件は今年起こった数件の乱射事件の一つであり、学校で起こった乱射事件としては、28名の犠牲者を出した、2012年のコネティカットのサンディ・フック事件に次ぐ最悪の悲劇だった。事件の10日前、バッハローの食料品店で乱射事件により、10名の犠牲者が出たばかりだった。

 今、銃規制は全米の注目を集めている

 毎回のことだが、銃乱射事件が起こると、全米が注目する。今回もバイデン大統領は5月29日(日)、夫人同伴でユバルディの犠牲者家族の弔問に訪れた。その際、大統領は「二度とこのような銃乱射事件が起こらないように対策を講じる」と語った。だが、ホワイトハウスはこの件に関しては議会の同意なしには何も出来ないことも承知している。

そして、皮肉にも同じ時期、(5月27~29日)、銃規制絶対反対の圧力団体である、創立151年のNRA(全米ライフル協会)が同じテキサス州のヒューストンで恒例の年次総会を開催していた。大会ではトランプ前大統領とテキサス選出、共和党クルーズ上院議員がスピーチを行った。なお、NRAは今回の銃乱射事件の犠牲者に丁重な哀悼の意を表していた。

 さて、バイデン大統領は目下、支持率が低下し、強いリーダーシップを発揮できないでいるが、政治家として一つ取柄がある。それは、NRAは米国の政治家を「銃器使用権利擁護運動」への貢献度に応じて、A~Fクラスに格付し、それに準じる政治献金を行うのだが、バイデン氏はランクFなので献金の対象にもなっていない。従って、彼はNRAに言いたいことが言える政治家なので、銃規制論争に風穴を開け得る可能性は持っている。因みにNRA法人会員の武器製造メーカーは年間100万ドルの会費を払っている、と言われる。

米下院、包括的銃規制法案を可決

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           写真:(https://www.elpaisen ingles.com

米下院は6月8日、包括的銃規制法案を賛成223、反対204の賛成多数で可決した。ただ上院では超党派の交渉で妥協案がまとまるまで下院案は棚上げされる見通しであることから、下院可決は象徴的な意味合いが強い。  包括的銃規制法案には半自動小銃の購入年齢の18歳から21歳への引き上げや、大容量弾倉の販売制限、銃器の安全な保管に関する連邦基準設定などの条項が盛り込まれている。採決では共和党議員5人が党の方針に反して賛成票を投じ、民主党からは2人が造反した。

下院での銃規制法案採決の背景には5月にテキサス州ユバルディとニューヨーク州バッファローで相次いで銃乱射事件が発生したことがある。しかし銃乱射事件が多発する中でも議会共和党は銃規制について、法を順守している銃保有者の権利を制限することになるとして抵抗している。

上院での議論は、他者や自身への脅威となる兆候を見せたと当局が判断する人物から一時的に銃を押収する権限を裁判所に付与する「レッドフラッグ法」の各州での導入に向けた州補助金交付などが焦点となっており、マーフィー議員(民主)とコーニン議員(共和)が率いる超党派グループが協議を進めている。

マーフィー議員は同グループが8日に初めて対面で会合を開いたとした上で、協議は前進していると述べた。また当初の交渉期限は今週末だったが、間に合わない見込みのため、現在は7月4日を考えていると説明した。(Bloomberg, Jarrel Dillard, Jun.6 2022)

 銃乱射事件と個人の銃器所有、携行の自由

さて銃乱射事件の公式定義は存在せず、幾つかの定義がある。中でも広く使用されているのが、GVA(銃暴力記録保管所)である。GVAはこう定義している。「発砲者を含めて、4名或いはそれ以上の死者と負傷者のある事件を指す」。

 銃乱射事件はGVAによると、2019年には417件、2020年には611件、2021年には693件勃発した。このGVAのレポートによれば、2020年の銃乱射事件の死亡者は513名だった。この年の米国の銃器による死者数は45,222名であるから、銃乱射事件による死亡者は、総死者数の1.13%になる。この数字は、同年の自殺者24,292名(銃器死の54%に当たる)

 比べれば微々たる数ではある。因みに殺人は銃器死総数の43%である。

 欧州、日本等の先進国と比べると、米国の銃器死は群を抜いている。因みに2020年の日本の銃器死は暴力団員1名のみだった。そして、米国が他国に比べて圧倒的に多いのが自殺なのだ。心理学者のサラ・ゴーマン博士は「銃器によってあなたの安全が保たれ、銃器が家にあるとあなたの家族はより安全になる」と米国人は信じている,と説く。そして、あなたの家族があなたの銃で自殺を図るという悲劇が起こるとは……。これがアメリカの現実なのだ。

 さて、個人の銃器所有権保護と携行の自由を堅持せよ、と主張するNRA(全米ライフル協会)には「錦の御旗」がある。それが合衆国で武装権と理解される、179112月発効の合衆国憲法修正第二条なのだ。第二条にはこう記されている。

「規律ある民兵は、自由な国家の安全保障に必要であるから、人民が銃器を保有しまたは携行する権利は、これを侵害してはならない」。

この憲法修正第二条が米国における「銃器規制反対」の根拠になっている。
(終わり)