私たちの50年!!

1962年5月11日サントス着のあるぜんちな丸第12次航で着伯。681名の同船者の移住先国への定着の過程を戦後移住の歴史の一部として残して置く事を目的とした私たちの40年!!と云うホームページを開設してい居りその関連BLOGとして位置付けている。

2016年11月

≪砂古友久さんのギャラリ≫ 楽書倶楽部ホームページより。(その87)

Ipê amarelo 水彩  40x30

 サンパウロから南西50キロ程の地点にSuzano市がありその郊外にIpêlandiaと称する 部落があり、そこに日系社会が運営する援護協会の施設の一つイッペーランディア 老人ホームがある。
 イッペーを描こうと思って車を飛ばしたが、盛りをすぎていたので部落のバス停に満開のイッペーを見つけて描いた。満開一色の花の木を主体に描くのはジャカランダでも経験したが、変化がつけ難いせいか、難しい。 2000年頃の駄作。

キューバ=Fカストロと中南米=(下)=軍政の反動で左派政権一色に=今後のキューバの風向きは? ニッケイ新聞WEB版より


 25日に逝去したキューバのフィデル・カストロ前評議会議長が中南米に与えた影響をもう少し見てみよう。
 90年代にはソ連などの東欧の共産圏が崩壊。共産主義の基盤を大きく失う中、キューバもドル解禁などの対策を余儀なくされた上、難民も後を絶たず、カストロ体制の今後も危ぶまれていた。
 だが1998年、中南米の状況は一気に変った。それがベネズエラでのウゴ・チャベス大統領就任だった。19世紀の南米諸国独立の父、シモン・ボリバルやフィデル氏を敬愛するチャベス氏は、反米を唱え、社会主義路線を打ち出した。
 ブラジルでも、2002年の大統領選で、軍政時代の反抗の闘士が集まった労働者党(PT)のルーラ氏が当選した。ルーラ政権の初代官房長官のジョゼ・ジルセウ氏はキューバでの軍事訓練を受けていた。ルーラ氏の後を継いだジウマ氏も、ゲリラとして戦い、軍政下で拷問を受けた経験がある。
 同様に、ボリビア、アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、エクアドル、コロンビアと、2000年代は中南米の国々が次々と左翼政権に転じていった。それはまるで、軍政時代の左翼活動家らが虐げられた60~70年代の恨みを晴らそうとするかのようだった。
 その一方、キューバでは、2000年代半ばからフィデル氏の体調不良が続き、体制は弟のラウル氏に移行。2008年には同氏が正式に評議会議長となった。キューバはラウル氏のもとで市場開放を進め、15年には米国のオバマ大統領との間で国交を回復させるなど、キューバ危機~軍政時代と続いてきた中南米での動乱も収まる方向に行くように見えた。
 だが、ここ数年で状況はまた変化しはじめた。ベネズエラでは2013年のチャベス大統領死去後、後継者のマドゥーロ政権で世が混乱。不満を叫ぶ国民と、独裁体制を強めて反動化する政府との間の対立が深まり、危機を迎えている。ブラジルでも、ラヴァ・ジャット作戦での不正摘発や経済悪化などで国民の不満が募り、
ジウマ大統領が罷免されたため、PT政権も13年間で幕を閉じた。
 キューバではラウル氏による体制が既に8年続いており、民主化を叫ぶ大きな運動もないから、フィデル氏の死後、すぐに体制が激変するとは考えにくい。だが、中南米で左翼政権がほころびはじめ、米国でのドナルド・トランプ氏の大統領選当選など、保守回帰の動きのある中、キューバが次にどういう動きを見せるかは注目される。(終わり)

 アメリカ便り「トランプを選んだAmerica」  富田さんからのお便りです。

和田さん&W50の皆さん、お元気ですか?今週のアメリカ便り「トランプを選んだAmericaは、NYタイムズ紙の出口調査に基づくデータをレポートします。白人、黒人、ヒスパニック、大学卒、男女別等の投票傾向は興味深いものがあります。トランプを選んだAmericaの素顔が分かります。下記のブログをお訪ねくだされば幸いです。


富田眞三  Shinzo Tomita

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            トランプを選んだAmerica

 
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写真:(www.quartz.com

 大統領選後、クリントン候補は潔く敗北宣言を行い、次のように語った。「昨夜、わたしはトランプ氏にお祝いの電話をかけ、共にわが国のために働きましょう、と申し上げました。先入観なしに、トランプ氏にこの国をリードするチャンスを与えなければなりません。トランプ氏がすべてのアメリカ人のための立派な大統領になってくれることを切望したい」。

民主党はホワイトハウスを失い、上下両院でも共和党を上回る議席を獲得できず、連邦レベルでは無力に近い状態になった。メディアが書き立てた、「共和党は内部分裂し、空中分解しつつある」という分析は彼らの希望的観測に過ぎなかった。

メディアは米国社会の趨勢、即ち既存の政治に見捨てられた、と感じている有権者の存在を過少評価していた。彼らに寄り添わなかったクリントンは敗れ、彼らに寄り添ったトランプが勝ったのだ。

大統領選の候補者選びの際、アメリカの投票者は一つの政策、例えば「米墨間の塀建設」で判断する傾向がある、と言う。この場合、クリントンは反対でトランプは賛成どころか推進派である。

この件に関して、ワシントン・ポストのマーガレット・サリバンはこう書いている。

「メディアはトランプの発言を言葉どおりに受け取るが、彼の存在を真剣に受け止めようとしない。多くの有権者はメディアとは逆に、トランプという存在を真剣に受け止め、彼が発する言葉はそのまま受け取らない。例えば、不法移民対策に関してトランプがメキシコとの国境に塀を造ると言うと、支持者はそれを額面どおりに受け取らず、『より理性的で理にかなった移民対策が生まれる』と感じるのだと言う。これを無知、低学歴と切り捨てるのは簡単だ。しかし、トランプの心が彼らの心に響いたことは厳然たる事実なのだ」。

なるほど、こう言うAmericaの有権者が「トランプを選んだ」のだ。

 
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写真:(AngusPictures

 「トランプを選んだAmerica」をつらつら考えて見ると、彼のスローガン「Make AmericaGreat Again」が大きな意味を持っていることに気がついた。多くのアメリカ人は世界におけるアメリカの存在感が低下している、と感じている。例えば、オバマ政権の「アジアに軸足を移すリバランス政策」はアジアにおける中国の強引な主張が目立ってきたことに対する日本等、長年同盟関係にある諸国の懸念を意識したものだった。

 しかし財政危機に悩む米国は、アジア地区の海軍を縮小する挙にでて、ますます中国を増長させた。その頃、カーター国防長官は個人的見解と断った上で、「中国の台頭を押さえつけるTPPの議会承認は、航空母艦を一隻増やすより効果的だ」と語っている。これがリベラル派の民主党の戦略を端的に表している。

 少々古いが共和党のセオドア・ルーズベルト大統領(第26代)の外交、安全保障戦略は、次のたとえ話が有名である。即ち、「大きなこん棒を持って、穏やかに話す」。TPPのような戦略は必要だが、「航空母艦」を持ってこそ、「穏やかに話しても」にらみが効くのである。この精神を受け継いだのがリーガン大統領だった。

では、この伝でオバマ戦略を語ると、こうなる。「こん棒を持たずに大声で話し合う」。

これでは最近の財政危機によって米国の力が弱まっていると感じる、周近平、プーティンは自国の影響力がおよぶ地域で、自国の国益を押し通してもオバマはだんまりを決め込む、と見ている。

 そして「このようなアメリカの地盤沈下を歯がゆく思う」米国人たちを代弁するのが、トランプなのだ。トランプはロナルド・リーガンの原則に回帰して、「こん棒を持って穏やかに話す」路線を継承し、リーガンと同様に「TPPは外交を優先して経済を犠牲にする愚策である」と考える。

要するにTPPは中国が主導する、アジアから欧州へと広がる一大経済圏を築く「一帯一路構想」である、AIIBに対抗するものと位置図ける構想、戦略がトランプにはないことを、我々日本人は肝に銘ずる必要がある。

 さて、前置きはこのくらいにして、大統領選の出口調査(ニューヨーク・タイムズ紙)の結果をご紹介したい。

大統領選出口調査結果

グラフの青棒はクリントン支持者、赤棒はトランプ支持者、灰色は独立系のデータ、意見を示す

図:nytimes.com/interactive/)

 
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男性の53%はトランプを支持。女性は54%がクリントン支持、トランプ支持も42%いる。

白人の58%はトランプを、黒人は88%がクリントン支持であり、ヒスパニックとアジアの65%はクリントンに投票した。だが、投票者の72%以上占める白人の優位は動かず、

非白人は合計しても28%しかいないので、勝負にならなかった。

年令的には若い人はクリントン、中年以上はトランプ支持であるが、それほど差はない。

人種別学歴は選挙結果に重大な影響を与えたと言える。白人の大卒は両者の支持が均衡している。差が出たのは、投票者の72%以上を占める白人中、70%を占める高卒以下が73でトランプを支持したことにある。マイノリティの非白人も数的に白人に及ばないのだ。

年収入の差は両支持派ともに顕著な影響は見られない。

居住地域も大きく影響した。都市部住人はクリントン支持だが、農村地帯と5万以下の小都市の住人の62%がトランプに投票した。大体、米国中南部地域は白人が80%以上を占めている。次の地図は郡単位の両候補の勝利を示している。赤がトランプ、青がクリントンである。全米3314郡のうち、青が勝ったのは大都市がある50郡程度に限られた。

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図:(www.countrymapprb512.com

要するに社会的不公正の犠牲になっている、と感じている「白いアメリカ人」の具体的な経済的不安と社会的憤りを取り上げた、ドナルド・トランプが勝ったのである。

とにかくトランプの激しい言動と共和党内では異端とも言える信条をトランプ支持者はまったく問題にしなかった。 

 さて、出口調査の「国の方向性」以降は両候補の政策と現政権の評価が問われた。

 トランプの目玉政策である「米墨間の塀建設」はクリントン支持者の10%が支持、86%は不支持を表明。トランプ支持者は支持が86%、不支持は17%と、両陣営の支持、不支持はまったく正反対になっている。

「不法移民対策」はクリントン支持者の「合法化の機会を与える」60%に対し、「強制送還」は14%に過ぎない。一方、トランプ支持者は「強制送還」支持が84%に達するが、「合法化の機会を与える」派も34%いることは注目に値する。

クリントン支持者は現政権を好評価し、「国経済と家計の状態」も良いとしている。一方トランプ支持者は現政権に怒っており、「オバマの仕事ぶり」にも90%が不支持を表明している状態では、オバマ政策を継承するクリントンは逆立ちしても勝てるわけがない。

 Americaは柄が悪くても自分たちに寄り添ってくれる、トランプに「偉大なアメリカを再建する」夢を託したのである。

今、ヒラリー・クリントンがトランプに語りかけたことを思い出している。「トランプ氏がすべてのアメリカ人のための立派な大統領になってくれることを切望したい」。

(終わり)

 調査はエディソン・リサーチ社が投票日当日、全米350投票所の24,537投票者に面接して収集したデータにもとづく。

「日本の水が飲みたい」(その2)

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第一章  旅僧
 
2007510日、午前535分、成田発サンパウロ直行のJAL-045便は東の空に朝の気配が迫るクンビッカ国際空港に時間通り到着した。
 
6年前、警察署内で犯した不祥事で、天職としていた刑事を已むなく辞め、それ以来、小さな旅行社を営んでいる日系二世のジョージ上村は、いつもの様に、この便で到着する自社斡旋の日本人客の世話で空港に来ていた。それに、ビジネスクラスの乗客一人が原因不明のオーバーブックキングの被害に遭い、その対応もあった。
払戻し請求手続き等の、ジョージの誠意ある対応に、被害客は怒りを抑え大事にいたらなかった。だが、何度も起こるこの種のトラブルに、JAL航空のサンパウロ営業担当者は『地球を半周する世界一長距離のこの便は、他社への委託変更が不可能で、オーバーブッキングはまちがってもしない』と断言しながらも、この不思議なトラブルの解明が出来ず困り果てていた。
 
このJAL便到着から1時間後、サービス旺盛なジョージは、数週間前に買った念願の日本製四輪駆動の大型車で、迎えがなかった3人の日本人と、いつの間に助手席にチャッカリ座った見知らぬ日本人を乗せ、彼の事務所があるサンパウロの東洋街に向かった。
空港から4車線の広い幹線道路に入って直ぐ、ジョージはサンパウロに向かって歩く一人の浮浪者を前方に確認した。
『こんな高速道路の脇を・・・危ないじゃないか』と、見下すような横目で見ながら、その浮浪者を抜いた。その瞬間、今見た信じ難い光景に驚いた。浮浪者と思った男は、トランクを引き、黒い法衣をまとい、頭をまるめたボーズであった。再確認しようと覗いたサイドミラーに、偶然、道路脇の潅木から飛び出す数人の男達が写った。明らかにボーズを襲おうとする強盗団である。
 ジョージは咄嗟に後続車との安全を確かめながら車を道路脇に寄せ、ボーズから30メートルオーバーで急停車した。
『なにが起きたのか?』と心配顔の日本人達にジョージが、
「ちょっとお待ちください!人を拾いますので」
それを聞いたサンパウロ在住の日本人が、
「君、こんな所で止まるのは危険だよ」と顔をしかめた。
「ボーズが危険な目に遭っています」
『なに、とぼけた事を』と言わんばかりの顔でサンパウロ在住の男が、
「ボーズ!?」
その言葉を無視して、笑顔を見せないジョージはコンソールボックスから拳銃を取り出し、スライドさせて弾を銃身に装填してから、狭い道路脇をバックした。
躊躇なくバックしてくる大型車にボーズを囲んでいた男達は驚き、潅木の中に逃げ込んだ。開放されたボーズは泥で汚れた法衣をたたきながら倒れたトランクを立て、サンパウロ方向に向かって歩き出した。
ボーズが車の横まで来ると、ジョージは窓ガラスを下ろし、助手席越しに、
「大丈夫ですか!サンパウロに向かっておられるようですが」
突然の日本語に驚きながらボーズは、
「はっ、はい!」と応え、
 
『衆生無辺誓願度(しゅじょう むへん せいがんど)、
 煩悩無尽誓願断(ぼんのう むじん せいがんだん)、
 法門無量誓願学(ほうもん むりょう せいがんがく)、
 仏道無上誓願成 (ぶつどう むじょう せいがんじょう)、
     ・・・、
 衆生無辺誓願度(しゅじょう むへん せいがんど)、
 煩悩無尽誓願断(ぼんのう むじん せいがんだん)、
 法門無量誓願学(ほうもん むりょう せいがんがく)、
 仏道無上誓願成 (ぶつどう むじょう せいがんじょう)、・・・、』
 
呪文のようなものを何度も繰り返しながら通り過ぎた。
ジョージは慌ててボーズの歩調に合わせて車を走らせ、
「サンパウロですね、サンパウロまで案内しますから、どうぞ・・・」
ボーズは、興奮して咄嗟の判断が出来ないのであろう、
「ありがとうございます」と礼を言ったにもかかわらず一心になにやらを唱えながらそのまま歩き続けた。
「この辺りは危険です!」
ジョージは車をボーズから56メートル先に止め、右手に拳銃を握り、運転席から飛び降り、頑固に歩き続けるボーズを保護した。
「サンパウロでしょう。遠慮しないで、どうぞ」そう言いながらも目は男達が逃げ込んだ潅木の中を睨んでいた。
「ありがとう御座います」
ボーズは興奮でまだ少し震える手を合わせ、やっとジョージに従った。
ボーズが引いたトランクを手早く車に詰め込みながら、
「バッグのトッ手が壊れていますよ」
「今、強盗みたいな人達に壊されました」
「みたいじゃなく、奴等は強盗です。まだこの辺にいますから急いで・・・」
ジョージは後部ドアを開け、
「すみません、少し詰めていただけませんか」
この言葉で、後部座席の3人がいやいやながら身体を寄せると半人分の隙間ができた。ジョージはその隙間にボーズを強引に押し込み、法衣が挟まらないように注意しながらドアを閉め、運転席に飛び乗り急発進した。
ホッとして安全ベルトを締めながら、
「怪我はないですか?」
日系人につつまれ、旅僧は少し落着きを取り戻し、
「大丈夫です」
「怪我なくて幸運でしたね。なにか被害は!?」
「大した事はありません」
「なにを?」
「腕時計とお金を・・・、貴方の車に驚いて、彼等は慌てて逃げだしました」
「奴等は麻薬常習者です。麻薬代さえ手にすれば、それでいいんです。それで、貴方を解放したんです。しかし、どうしてあんな所を?貴方も浮浪者だと思い見逃すところでしたよ」
「とにかくサンパウロまで歩こうと、そうすればなんとかなると思い」
「なんとかなる!?タクシーかシャトルバスがあったでしょう」
「言葉が全く分からず。それで歩こうと・・・」
15キロ以上あるんですよ」
「そーんなにですか。あの~、ブラジルは何語を話すんですか?」
「えっ!それも知らないでブラジルへ?・・・、ポルトガル語ですよ」
「あれはポルトガル語ですか。だからさっぱり分かりませんでした。それで、歩こうと・・・」
「貴方はボーズですね」
「修行僧です」
「ユニフォルメ(ユニフォーム)からして立派なボーズじゃないですか」
後部座席のぎゅぎゅう詰めとは対照的に、ゆったりと助手席に座るチャッカリ男が、、
「彼をボーズ、ボーズと呼ぶってーのはボーズに失礼じゃねーか、僧侶とかオッショサンと呼べねーのか、そうしねーと罰が当たるってもんだ」
「バチが当たる?いつもお盆に『ボーズが来たぞー!』と一世のタカノリ叔父が怒鳴っていたもんで、それで『ボーズ』と呼ぶのが当たり前だと・・・」
旅僧はだいぶ落着きをとりもどし、
「中嶋と呼んで下さい」
「ジョージです」
少し年下で無鉄砲でありながら言葉使いと態度から誠実さを感じさせる旅僧にジョージは親近感を持った。
「ブラジルに知合いは?」
「父と駒河大学の同輩で、ブラジルに渡られた僧侶を訪ねて来ました」
「その方のインデレッソ(アドレス)は?」
「アドレスですか?ここに・・・、手紙で何度も連絡を試みたのですが上手くいかず・・・、とりあえずブラジルに行けば何とか会えると思い・・・」
「なんとか?」ジョージはボーズの無謀さに驚いた。
肩からベルトを外さず、しっかり抱いたショルダーバッグから、旅僧は手紙が入ったポリ袋を取り出し差し出し、
「ここに住所が・・・」
 運転中のジョージは、
「後で見せて下さい。そこへお連れしますから」
助手席の男が、後部座席に向って、自ら出した100ドル札をみんなに見せながら、
「オッショさんがスッテンテンで可哀想だ、皆で助けようじゃねーか」
この呼び掛けに、
「ブラジルまで来て下さった和尚さんだ」
皆が快く賛同し、400ドルが集まった。
「オッショさん、このゼニ、お布施と思って受け取っておくんな」昔の旅役者みたいな言葉でその『ゼニ』を中嶋に差し出した。
「私の愚かな行ないで、これ以上ご迷惑をおかけするのは・・・」
「そう言わずに取っときな。これも、なにかの縁があったからじゃねーか」
サンパウロ在住の男が、
「それで、ブラジルの悪い印象を打ち消してください。これから、きっといい事がありますよ」
それでも遠慮する旅僧に、
「素直に受け取ったらいいじゃないか」ジョージが強い口調で言った。
旅僧は窮屈な後部座席で中腰になって一礼し、
「御厚意に深く感謝します。ありがとうございます」
助手席のチャッカリ男が結果に満足して、
「オッショさんはブロジルで、もう貴重な経験をしたじゃねーか」
「おっしゃる通りです。ブラジルに着いた途端、仏様から『お咎(とが)め』を受け、『悲(あわれ)み』によって救われ、更に『慈(おめぐ)み』を賜って、『普賢菩薩』さまの化身のような皆様からお『慈悲』の有りがたさを教えていただきました」
「『フゲンボサツ』?」
「『慈悲』を司る仏さまです」
「我々がその仏さまの化身だって? じゃー、もっと詳しく知りたいな」
その問いに、傷心の旅僧は水を得た魚の様に元気を取り戻し、
「はい、『普賢菩薩』さまはですね、6本の牙を持った白象に乗って、たくさんの菩薩さまを引き連れて、お『釈迦』さまを訪れ、『十大誓願』をなさったお方と『法華経』にあります」
「『ジュウダイセイガン』?とは、誓いですか?」
その問に中嶋旅僧はますます目を輝かせ、
「はい、『十大誓願』とは『如来』さまを称賛し、仏を慕い、仏を大切にし、仏に学び、供養を修め、教義を広め、過ちを素直に悔い、善事者を助け、いつも人々と共にし、得た功徳を人々に回向する、の十項目からなる誓いです。この10番目の『功徳を人々に回向する』が正に『慈悲』のお誓いです」
「仏さまがお誓いをなされるのですか?それに、意外と身近なお誓いですね」
「そうです。仏さま達は身近な方達なのです。そして、『誓願』は自分の役割を宣言されるようなもので、ほとんどの仏様が『誓願』をお立てです。すべての『菩薩』さまに共通する誓いを『総願』と云い、それに対し個別に、例えば『薬師如来』さまの『十二誓願』、『阿弥陀如来』さまの『四十八誓願』、『お釈迦』さまの『五百大誓願』などとたくさんあって、これ等を全部まとめて『本願』と云います」
「あ~あ、そうなのか、それで、『西本願寺』や『東本願寺』の名はそこからきているんだ」
後部座席の年寄りの男が、旅僧の分り易い説明に感激して、
「日本からすばらしいオボーさんが来られたのですよ、それも若いオボーさんで、ブラジル日系人にとって、これほど喜ばしい事はありませんよ」
「私はそんなすばらしい僧侶ではありません。仏教に関し、一生懸命勉強したつもりですが、なんの経験もない愚僧です」
「そんな事ありませんよ」
「いえ、そうなんです。先輩僧にそう指摘され、これではいけないと悩やんで、それでブラジルへ・・・」
「ブラジルへ修行に来たんですか!?」
「はい、ブラジルで御活躍の僧に仕え、経験を積み本物になろうと・・・。皆さん、このノートにお名前とご連絡先をお願いします」
「そんな大袈裟な金じゃねーから、そこまで・・・」
「いえ、心がこもった『慈悲』と云う大金です。お願いします」
「私の町にいらっしたら是非寄ってください」と言いながら、年寄りの男が率先して名前と住所を書き入れると、他の日本人達もそれに習った。
旅僧はブラジルに着いて不運に遭ったが、それが『因』で思いもよらない日系人との『縁』が生れ、その幸運に感謝した。

≪中銀 24 日発表の統計≫ 山下さんからのお便りです。

山下@リオです
 
中銀24日発表の統計より、
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10月の海外直接投資は41億ドル、過去12カ月累積は10月まで553億ドルです。日本は8位でした。(inv611.xls)
 
国内の外貨フローは、貿易で10月は27億ドルの黒字、ファイナンスは、61億ドルの黒字で、差し引き88億ドルの流入となりました。
本年になって70億ドルが流出しています。
 
本年10月の経常収支は33億ドルの赤字です。
 
10月の貿易収支は23億ドルの黒字で、過去12カ月累積は460億ドルの黒字まで回復、レアル安効果が出ています。
因みに過去の記録は20075月の476億ドルです。
 
10月の外貨準備高は3754億ドルと順調に回復です。
因みに過去の記録は20146月の3805億ドルです。
(添付cambiocontratado611.xls) 
(添付baldepagto611.xls) 
 
10月のM10.1%増、M1の過去12カ月累積は2.56%増です。
 
インフレはFGVIGPDI指数で、10月はわずか0.13%、過去12カ月累積は10月まで7.96%と一桁を達成しました。

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