中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書=どうなるの?! 日本との絆=コロニア必読の重要な方針=(8)  ニッケイ新聞WEB版より

2017年8月31日 
《イ》地方公共団体による連携のための施策
 (ア)地域の魅力の発信や訪日観光客の誘致等、地方公共団体の国際化の課題を中南米地域において推進する上で、海外県人会その他日系諸団体のネットワークとの連携を進めることは有効である。
 (イ)こうした連携を通じた地方のプロモーションや観光客誘致の取組を更に有効なものとするための補完的取組として、例えば、中南米から日本への短期滞在に関する制度の緩和や中南米各国における物品等の通関手続きの改善、日系農業者等と日本の地方の食産業関係者とのビジネス交流の促進を進めることへの期待がある。
(ウ)日本にゆかりのある方々も含め、中南米日系社会と地方公共団体の連携強化が重要であり、ルーツをたどることによって日本への親近感を高めるためにも、①県費留学生の受入等、海外県人会と地方公共団体との絆を深める取組について、政府とも連携した施策推進、②地方公共団体が行う中南米との文化交流事業等について、政府とも連携したその拡大のための施策推進、③海外県人会と地方公共団体をつなぐ組織体制の充実強化を図るべき。

《ウ》経済界による連携のための施策
 (ア)日系社会と日本の経済界との新たな接点を設けるため、日本の在外公館及び在外経済団体の仲介による進出日本企業と新世代日系人リーダーとの交流、新世代日系人のネットワークを活用したビジネス連携、ビジネスセミナー等の開催・講演等の連携事業、日系企業家と日本の中小企業のマッチング機会の設定、日系農業者等と日本の食産業関係者との交流といった取組を進めることが期待される。
 特に、若い世代の日系人は既存の日系団体に参加しないことも多いので、在外公館等政府機関が間に入って日系社会をまとめ、現地の日本商工会議所等と連携を図ることも一案である。
 また、進出日本企業が日系社会との連携を強化し、日系の優秀な人材を本邦及び現地の幹部として、一層積極的に登用することは重要である。これにより日系人の日本語習得や日系社会への帰属のメリットが高まると考えられる。この点につき、個々の企業のみならず政府及び経済界レベルでの支援も検討されるべきである。
 (イ)日系高度人材の活用のためのマッチングとして研修生の同窓会や日系技術者協会等の活用が期待できる。
 (ウ)経済界は、日系人を含め中南米から日本に来ている人達への支援をしている。現地の小学校に奨学金を出す、集住地で活動するNPOを支援する、日本から中南米に帰国した子弟が適応するための支援を現地サイドで行うなど、企業活動の中で取り組んでおり、今後ともこうした取組が望まれる。
 (エ)進出日系企業の駐在員はこれまで日系人の歴史、習慣を必ずしも十分理解してこなかった。駐在員やその家族もその点を意識して、また、セミナー等を通じてビジネスマッチング機会を持つことで面白い展開が期待できる。
 (オ)米国とのTOMODACHIイニシアチブのような、日本と中南米諸国の協働プロジェクトでの枠組みを活用した若者同士の相互交流の機会創出の事例も参考になる。現地職業訓練校の奨学金制度支援及び実地研修の場の提供・2か国政府の人材育成プログラムなどへの支援や武道等日本文化を通じたNPOとの関係強化、日系議員の活動支援などは、日系社会との連携を深める上でも有意義。
 また現地政府が主導する留学プログラムを絡める取組も面白いかもしれない。(つづく)