アメリカ便り「メキシコ国境で緊張高まる」  富田さんからのお便りです。(続き)

 亡命とはすでに米国内に居住しているか、国境に到着した、国際法の定義する「難民」に該当する外国籍者に与えられる保護を意味する。(1951年国連難民協定)
1967年の難民条約議定書は、難民を次のように定義している。即ち、難民とは彼、または彼女の祖国に帰国出来ない、または帰国したくない人であり、過去に於ける迫害、または人種、宗教、国籍、特定の社会的グループの一員であること、政治的意見の相異等を原因とする、将来に亘る「根拠の確かな恐怖」があることによって、当該国に於いて保護が受けられない人々を指す。
 
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写真:(www.laopinion.com)

1125日現在、メキシコ内務省発表の数字によると、移民キャラバンの人数は次の通りである。総数8,247名、このうち、7,417名がメキシコ・バハ・カリフォルニア州、メヒカリ市とティフアナ市に滞在している。残りの830名のうち、417名がメキシコ市に残留し、253名が北へ向けシナロア、ソノラ州内を移動中、153名は個別に国境へ向け移動中、とのことである。
今朝、1126日、内務省は様々な時期のキャラバンによってメキシコへ入国した約2000名の中米人が、メキシコ国立移民協会(INM)に祖国への送還を要求している、と発表した。

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               グラフ:(www.americanimmigrationcouncel.org)
さて現在、米国に亡命申請をしている、外国人は318,0002018年現在)に上る。申請が受け付けられたあと、面接があるが、早くても手続きが完結するまでに1,000日かかる。カリフォルニア州とニュージャージー州は1,300日もかかっている。
 但し、子供、シングルマザー、家庭内暴力及び拷問被害者、その他迫害、トラウマに苦しめられている人は、申請期間中、米国内で居住することが許可されることがある。     この例外規定に期待してか、子供連れの女性がキャラバンに多数参加している。確かに移民キャラバン以前は、多くの幼児連れの中米人「亡命申請者」は簡単に入国出来ていたようだ。
なお申請が受け付けられた後、亡命申請者は申請後150日経過すると、労働許可を申請できる。        
 
  米墨国境のサンイシドロ検問所に出頭した、米国ビザも持たない中米人たちは、係官から入国を拒否されないために、「亡命を申請する」ことになる。
米国の官憲は、彼らを出身国に送還することにより、彼らの生命の危険または自由が束縛される、危険に遭遇させることによって、国際法及び国内法に違反しない、ということを確実にするために、「根拠の確かな差し迫る危険、苦痛に対する恐怖」の有無を立証する必要がある。
 そのためには、亡命申請者は、「恐怖の存在」を公式書類によって証明しなければならない。そして、これの証明後、亡命の許可までには、3~4年かかる、のである。
 
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                                 写真:(newsweek.mex.com)

その間、中米人たちはメキシコ側で待機するよう、米側はメキシコ政府に要請しているようである。ところが、メキシコの新大統領・アンドレス・ロペス・オブラドール氏は121日に就任する、という間の悪さなので、移民キャラバンの人々は、クリスマスを寒いうえ劣悪な環境の仮設収容所で過ごすことになるだろう。
 明るいニュースもある。ティフアナ市当局によると、中米人たちに同市内で10万人規模の求人があり、平均給与は月額8,500ペソ(425ドル)だと、いう。ところが、中米人たちはこれに興味を示していないようだ。出身国に帰れば、生命の危険があるのなら、メキシコに定住したら良い、と思うのだが……。
(以上)