《ブラジル》最高裁長官が大統領長男らの疑惑に関する捜査を一時停止に=「検察の捜査過程に齟齬あり」として=「当然の判断」と弁護側 ニッケイ新聞WEB版より

ジアス・トフォリ長官(Gil Ferreira/Ag. CNJ)
 【既報関連】ブラジル最高裁のジアス・トフォリ長官は16日、司法当局の許可を得る前に、金融活動審議会(Coaf)、国税庁、伯国中銀などの監査機関の内部データを使用して行われた金融犯罪調査を一時停止すると決定した。17日付現地各紙が報じた。
 トフォリ長官の決定は、ジャイール・ボウソナロ大統領(社会自由党・PSL)の長男、フラヴィオ・ボウソナロ上議(PSL)弁護団の主張(検察によるCoaf内部データの使用過程に法的齟齬がある)を受け入れたものだ。

 2016年1月から2017年1月にかけて、州議時代のフラヴィオ氏の秘書だったファブリシオ・ケイロス氏の銀行口座で合計120万レアルに及ぶ不審な金の動きがあった事を、Coafの報告書は示している。
 リオ州検察はCoafの持っていたデータを〃共有〃し、フラヴィオ氏も含めたグループの不審な金の動きに関する捜査を開始。司法による銀行口座取引情報開示許可は捜査開始後に得ている。
 トフォリ長官の判断により、リオ州検察局がフラヴィオ氏らを対象にして行っていた捜査は一時停止される。フラヴィオ上議は捜査を止めさせようと、これまでも何度も試みて失敗してきたが、最高裁長官の決断により、その試みは成功した。
 最高裁は既に、司法の許可を得る前に、検察が監査機関から報告書などを入手し、捜査対象者の銀行口座の動きを把握して捜査することを認めてはいる。しかし、「データは口座の名義と動いた金額だけに留まると最高裁は決めた」というのが同長官の理解だ。   

 トフォリ長官の決定は「司法の許可を得る前にCoafなどの監査機関の内部データを検察が勝手に使用した捜査」全てに関わってくるため、ラヴァ・ジャット(LJ)作戦や、違法薬物密売など、他の捜査も今後停止される可能性がある。
 トフォリ長官が捜査の一時停止をフラヴィオ氏のケースだけに限定しなかった理由は、今後、最高裁大法廷で同件が審理された後になって、関連裁判がいっぺんに無効化されてしまう事態を避けるためだ。
 関連捜査の一時停止期間は、「司法が許可する前に検察が監査機関から入手したデータを使用して、捜査を行うことの合法性」を最高裁大法廷で審理するまでで、その審理は11月21日に予定されている。
 フラヴィオ氏の弁護士、フレデリク・ワセフィ氏は、「法に則った当然の決断。これは国民全てに当てはまり、フラヴィオ氏だけに恩恵を与えるものなどではない」と語り、政府の上院リーダー、フェルナンド・ベゼーラ・コエーリョ上議(民主運動・MDB)もトフォリ長官の決定を支持した。
 
一方、リオ州検察局のLJ作戦コーディネーター、エル・アジ氏は、「(長官の決定は)国内の資金洗浄容疑の関連捜査をほぼ全て止めてしまう」と批判した。