《ブラジル》緊急支援金減額で貧困者増加=極貧者も1930万人に ニッケイ新聞WEB版より

緊急支援金の減額で貧困者増加と報じる22日付G1サイトの記事の一部

 サンパウロ総合大学不平等に関するマクロ経済調査センター(Made―USP)が22日、新型コロナ対策としての緊急支援金が減額された上、受給者も一家で1人になったため、貧困者が6100万人、極貧レベルの人も1930万人に増えたと発表した。
 同センターでは世界銀行の基準に則り、1人あたりの世帯収入が月額469レアル(約9300円、1・90ドル/日)以下を貧困者、162レアル(約3200円)以下を極貧者と規定している。

 19年の貧困者は5190万人だったから、新型コロナのパンデミックで貧困者が910万人増えた事になる。また、極貧者は19年の1390万人以降、540万人増えている。
 同センター調査員のアナ・ルイーザ・マトス・デ・オリヴェイラ氏によると、貧困者や極貧者の増加傾向はパンデミック前からあったが、昨年は600レアル(家計を支える女性には1200レアル)の緊急支援金が支給され、貧困者や極貧者の増加が回避された。
 今年の支援金額は一人暮らし150レアル、家族持ち250レアル、家計を支える女性375レアルに減った上、一家に1人のみになったため、貧困者や極貧者が増えた。
 オリヴェイラ氏は、昨年の国内総生産(GDP)が4・1%のマイナスで済んだのは、緊急支援金の支給で最低限の消費活動が保たれた人が多かったからだという。
 ブラジルの貧困者は、ボルサ・ファミリアと呼ばれる生活扶助やインフレ率以上の調整で実質的に増額されていた最低賃金、教育の機関が増えた事などにより、14年までは減る傾向にあった。

 だが、15年の経済危機で貧困者が再び増加。貧困者の増加傾向が中断されたのは、パンデミックによって緊急支援金が導入されたためで、4月以降は600レアルか1200レアル、9月以降もその半額が支給された事で、2950億レアルの経済効果が生じた。
 貧困者や極貧者が最も減った20年7月は、極貧者が人口の2・4%、貧困者は20・3%だった。ジェツリオ・ヴァルガス財団ブラジル経済研究所のダニエル・ドゥッケ氏によると、この数字は少なくとも過去40年間で最も低い。
 19年は極貧者6・6%、貧困者24・8%で、現在は極貧者9・1%、貧困者28・9%とされている。
 1~3月は緊急支援金が支給されず、状況がより悪化した。4月からは支援金の支給が始まったが、支給は連邦貯蓄銀行のアプリで行われ、インターネットにアクセスする手段を持たない人は、5月まで利用できない。
 今年の緊急支援金受給者は昨年の6820万人から4560万世帯に減少。対象は昨年の受給者に限られ、年末年始に失業したりした人達は対象外となる。今年の支給回数は4回、支給総額は440億レアルのみだ。
 今年はパンデミック第2波で外出規制が強化され、失業や減収で悩む人が増えた。19年の貧困者は黒人女性の33%、黒人男性の32%、白人(男女共)の15%で、極貧者は黒人女性の9・2%、黒人男性の8・9%、白人女性の3・5%、白人男性の3・4%だったが、今年の各グループの極貧者は、12・3%、11・6%、5・6%、5・5%だ。
 調査員達は、貧困者や極貧者の増加は現在の支援が不十分である証拠とし、国や州などの支援強化が必要だと主張。国連も、貧困者やビジネス継続のための支援を継続するよう勧めている。(22日付G1サイト、21日付アジェンシア・ブラジルより)

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